上野に映画を見に行こう(あまり版:前編)

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【概要】
*あくまでこれは僕の視点です。
若干他の人とのレポと異なっている部分もありますが、
そこは話の流れを円滑にするための処置だと思ってください。
なにせ僕は自分の事しか考えていませんから。


10月7日(土)晴れ

【詳細】

第一話〜出鼻を挫く男

僕は電車の中で独り焦っていました。

何故なら13時上野集合というのに、
どう考えたって間に合わない。
皇子さんからも「マジかよ!早くして下さい」
と、かなり切羽詰った様子。

これは焦らざるを得ない状況です。
だいたい前日に急遽参加を申し出たのに、
遅刻して、尚且つ企画がパーになったら、
会わす顔がないですし。

しかし、いざ到着してみると、
待ち合わせ場所のファンシーショップで楽しげに戯れる
皇子さんとめむさんの2人しか居ません。
(若干現実逃避気味)

「あれ?今日はこれだけですか?」
と聞くと皇子さんは
「いや、あとlong君が来るんだけど、
アイツ今さっき『今日集合何時ですか?』なんて
連絡が着たから、まだ当分待つよ」
とのお言葉。

結局long君が来たのは15時過ぎ。
てっきり遅刻した自分が今日は下っ端だと思っていたのですが、
他に生贄が出来たようで、僕は心の中でドス黒く笑いました。
「ニヤリ」と…

そうして一番遅れてきたlong君の罰は、
映画館入場時、他の3人とは別に、1人で先に入る事という事に決まりました。
未知の世界へたった1人で乗り込む恐怖。
この企画の趣旨上、これは誰かがやらなければならない事です。
まぁ、さすがに4人纏まって入るのも怪し過ぎますしね。

(ちなみに僕はココで重大な間違いを犯しています。)
(それが最終的に自分の首を絞めることなろうとは、)
(全く思ってもいませんでした。)

しかし、そんなlong君はいたって平然と了承しました。
別段遅刻の言い訳もせずに。

これ以後long君は、敬称は略します。
当たり前です。
なんたって2時間オーバーの遅刻をかましたのですから。
そのおかげで企画が1つしか出来なかったのですから。
なぁ、longよぉ。(笑
(見下しながらあざけ笑うかのように前髪を掴んで)




第二話〜鶏の心臓を持つ男

long(敬称略)を待ってる間、皇子さんに聞きました。
今日はまた、なんでこんな企画を考えたんですか?と、
そしたら皇子さんは、
「今日はね、俺の卒業なんだよ」
と答えてくれました。

…まったく意味が分かりません。

もう少し分かりやすく説明を求めると、

「俺はね、周りから『インポ皇子、インポ皇子』て言われるんだけどさ、
違うという事を皆に分からせたい!
俺はインポじゃねぇ、俺はたつんだ!
そのための企画なんだよ今日は!
今日で俺はインポを卒業だ!」

とのお答え。

僕は確信しました。
ああ、この人は馬鹿なんだなぁ、と。
愛すべきお馬鹿さんなんだな、と。

でも、僕はそういうお馬鹿さんは決して嫌いじゃありません。
むしろより好意が湧いたくらいです。

さて、時を戻して、ようやく全員集合した僕たちは、
愛すべき皇子さんが先頭に立って、
上野のロータリー周辺にあるゲイ映画専門の映画館を探し始めました。
「探す」というと、語弊がありますが、
場所を知っているのが皇子さんだけだったので、
その皇子さんが迷えば、後に続く僕たちも迷います。

道中映画のタイトルが「黒と黒」などという、
如何にも意味深めいたものである事を聞いたり、
激安のピンク映画館を横目にしながら、

ぐるぐるぐるぐる。

20分ほど探したでしょうか。
ようやく目的地が見つかり、安心したのもつかの間、
皇子さんは僕たちの目を疑うような行動に出たのです。

映画館を見つけた皇子さんは、その映画館に一瞥くれると、
そのまま素通りして、奥の公園に足を進め始めたのです。

僕たちが、慌てて皇子さんを引きとめ、
―――どうしたんですか?
―――ここでしょ?
と口々に言うと、皇子さんは

「だから、とりあえず一旦公園で休憩しよう」

などとのたまわったのです!(怒

普通に聞けば、何が目を疑うような行動だ、
と、言われるかもしれませんが、
その時の皇子さんの仕草があんまりだったのです。

あからさまな、へっぴり腰!
あからさまな、早足!

皇子さん曰く、
「ここはソノ手の人が沢山いるから、危険だ」とのこと。
まぁ、言わんとする事は分からないでもありません。
路地のような狭い道の端々に居る4、5人の人。
そう言われると、ソノ手の人のように見えます。

でもねぇ、だからといってもその姿はあんまりです。
「今日は俺の卒業だ」とのたまわっていた威勢は何処へ行ったのか。
まるで影も形も見えません。

そんな最中、移動中に
映画館に先に一人で入る事を義務付けられたlongが、
一人映画館の上映予告を見るために階段を上っていきました。
そして一言
「次回上映は16時05分だって」

皇子さんは安堵の顔を薄く浮かべて、
「じゃあ、それまで時間潰そうか」
と言いました。


勿論これ以後、皇子さんも敬称は略します。
当たり前どころの話ではありません。
企画立案者であるにも関わらず、
あれだけの大口を叩いたのにも関わらず、
あの態度!(怒

最悪を通り越して最低です。

なぁインギよぅ。(笑
(両手を後で縛り、右頬をナイフでぴたぴたと撫で付けながら)




第三話〜不憫な女

さて、そんなチキンは放っておいて、(笑
ここで問題になるのは紅一点のめむ嬢です。
これから行くゲイ映画上映の映画館は言わずもがな、男の社交場です。
つまり男性が自分の好みの男性を探す場所。
言うなれば、冗談の通じない空間です。
真剣な場を茶化される事ほど、人が怒る事はありません。

そんな中に女性が入るという行為は、
まさに人気パンクバンドのライブに入り込むAーBOYのようなものです。
(例え分かり辛)

事実危機を察してか、上映までの待ち時間の間、しきりに
「私、男性に見える?」
と聞いてきますが、
何処からどう見ても、
世界の中心で愛を叫んでいるようにしか見えません。<インギレポ参照

そうコメントすると、インギは急に
「助けてくださいーーー!」
(劇中の一番有名なシーンですね)
と街中で叫びました。

まぁ普通なら
「皇子さん街中でそんな事するなんて!→げらげらーーー」
ですが、前述の件があるので、
どうしても負け犬の遠吠え感が拭えません。
そんな冷ややかな空気が
更にめむさんを不安にさせたのは
言うまでもないことでしょう。

ほどなくして上映時間となり、
早めに映画館へ。
実はまだ10分程度時間があったで、インギは少し渋っていたのですが、
時間を潰すのに飽きた&予告編を見たいという意見に折れ、
ようやく中へ入る事となりました。

建物の中に入ると、まず急な階段があって、
上った所でおばさんがちっこい机を置いて受付をしています。
映画館というよりも、まるでどっかの小劇場のような感じ。
アングラ感プンプンです。(笑

入場順は
long、インギ、自分、めむさんの順。

罰ゲームも兼ねて、男らしく(ココでの男らしさはある意味命取りな気がしますが)
先頭を切ったlongはさすが、ホモ慣れしているなぁとも思いましたが、
後に続くように入ったインギもさすがです。
この時点でもあくまで安全な2番手の位置を確保したのですから。
輪をかけたチキンです。

で、自分は紅一点のめむさんを心配して、
めむさんと一緒に入りました。
受付で手渡しでチケット買うと思ったので、
めむさんが声を出したらバレると思い、
「めむさんの分もチケット買いますよ」
と優しい声をかけたくらいです。

と思ったら、チケットは自販機。
結局個人でチケットを買い、受付。
おばちゃんにチケットを渡して、
めむさんが節目がちにおばさんにチケットを渡すのを
確認してから廊下へと進みました。

視線を上げ、そこに広がったのは映画館独特の薄暗い照明。
プラス安っぽい青の照明。
プラス異臭。
プラス壁に寄りかかって何かを待っている男。
腕を組んで何かを待っている男。
スーツ姿なのにこんな所に居る男。
男。
男。

アングラにもほどがあります。

その暗い照明の中で、インギが居たので、
後に付いて行こうと歩みを進めると、
急に

「グッ」

と、後から僕の鞄を誰かが掴みました。
瞬間ビクッとなった僕ですが、
おそるおそる後を見てみると、
めむさんがどこぞの子犬のような顔で、
僕の鞄を掴んでいるではありませんか!

そうです、僕も知らず知らずの内に歩みが早くなっていたのです。
それに不安を覚えためむさんが、
置いていかれると思って慌てて掴んだのでした。

しかも先ほどまで自分を心配してくれた僕に
置いていかれると思ったのですから、
それはもう必死だったにちがいありません。

かくして、めむさんは、
ホモ映画館に、自分を含め男性3人に置いてきぼりを食らうという、
軽い人間不信体験をしたのでした。
(7割僕のせい)

そんなめむさんには、これから定冠詞として
「不憫な」を付けさせていただきます。
不憫なめむさん、あの時はスイマセンでした。

<あまり版:中篇につづく>

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