上野に映画を見に行こう(あまり版:後編)

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【詳細】

第六話〜黒と黒


せっかくなので、映画のストーリーをかい摘んで記します。

主人公はA君。(名前忘れた。ちなみに鳩胸)
A君は友人B、C、D君の3人とともに、バイト感覚で身体を売って金を稼ぐ高校生♪
金の使い道は流行りもののGショックや、エアマックス、など、
友人に自慢する為のブランド品です。
まぁ、ブランドもの欲しさに援助交際をする女子高生、
と置き換えると分かりやすいですね。

もちろんそこに罪悪感や後ろめたさなんてものはありません。

この4人もお互いが対等の友人というわけではなく、
B君がD君に公衆便所で無理矢理しゃぶらせるシーンなんかも入ってます。
こんな微妙な人間関係を描くとは中々侮れません。

ある日A君以外の3人の右腕にはタトゥーが入っていたのを見て、羨ましがりました。
当たり前です、周りがやっているのに自分がやっていないのは許せません。
それが現代の男子高生ですから。
いくらくらいかかるのか聞くと、これがまた結構な値段。

さすがに手持ちの金では無理という事で、
映画館から出てくる男性に片っ端から、コールガールよろしく声をかけるA君。
しかし、不況のせいか、なかなか客が捕まりません。

そんな最中、真っ当なバイト先である、ホモBARでの事。
店長がそれまで働いていた手品師に給料として
100万近くもの札束を渡している所を目撃したのです。

そこでA君は、手品師を誘惑しました。
そしてベッドを共にする2人。
A君は枕元にある札束の封筒を掴もうと手を伸ばす直前、手品師は言いました。

「頼む、僕が海外に行くまでの1週間。僕の恋人になってくれ」


どうやら、彼は手品の勉強をする為に1週間後海外に行くとの事。
それまでの思い出つくりとして、A君に恋人になってくれ、と。
A君はそれを承諾しました。
勿論金目当てです。

そして、2人で過ごす蜜月。
手品師は自分の夢の話もしました。
やりたいことなんて何もない空っぽ10代代表のA君には
その話がとても眩しく見えました。
そうです、A君はじょじょに手品師に惹かれていったのです。

ある日、手品師に高そうなコートを買ってもらい、
後日それを質屋に入れようとするA君ですが、渡して直に、
「やっぱり辞めます」
と思い止まりコートを持って帰るなどというシーンは、
10代の機敏に揺れる男心を巧みに演出しています。

観ていて目が離せません。(笑

ちなみにタイトルの「黒と黒」ですが、
そんな2人蜜月のシーンでの1つ、
手品師がA君に手品を見せるところにあります。

2組のトランプをシャッフルしたカードから中央に2枚並べ、
その上下左右にも2枚ずつ並べます。
背表紙はそれぞれ赤と黒。
それを返すと、それぞれが、キングとキング、ジャックとジャックのつがいのカード。
更にそれを上下左右の順に返すと、
当たり前ですが、背表紙がそれぞれ赤と黒のカードです。
そして手品師は言います。

「僕らは間違えて生まれてきたのかもしれない」

そう言いながら最後に返した中央の二枚のカードの背表紙は「黒と黒」だったのです!

さすがです。
おそらくこれでA君も駄目押しだったのでしょう。

最後の夜。
煌びやかなネオンが光る街をバックに、
好きだ、と情熱的な告白をする手品師。
しかし、A君は明日には海外に1人で言っちゃうじゃないか、と言ってしまいます。
最初から金目当てだったんだよ!と、今ではここにも無い事も言ってしまうのです。
そして、そんなA君を優しく抱きしめる手品師。

手品師は航空機のチケットを破ろうとしますが、
A君はそれを優しく止めます。
「必ず戻ってくる」
そう言って2人は最後の夜を熱く過ごすのです。



第7話〜非日常

そんな映画のストーリーも頭に詰め込めるほど
集中しようとしていたのですが、
ひっきりなしに響く扉の音。
同時に射す外の光。
相変わらずスクリーンを遠慮なく横切る人のせいで、
集中(現実逃避)は出来ず、
自分の置かれている状況をひっきりなしに思いしらされ、恐怖し、
早くこの映画が終わる事を切に願ってました。

異様に長い時間経過。
全然進まない腕時計の針。

そんな事を悶々と考えていた頃でしょうか、
残り15分ほどになって1人の男性が左隣に座ってきたのです。
どうやら、男性は少し気の大きい方らしく、
缶コーヒーを片手に、低い声で、
う〜、だの、あ〜、だの、言ってます。

残り15分です。
僕もここまで来たなら、最後まで行く!と泣きながら思っていたので、
何が起きても我慢してやる、と心に誓いました。


コツンコツンと肘が当りました。

椅子の肘掛は両隣兼用なので、僕は使ってません。
隣の空中領域を侵さないように、抱え込んだ鞄の上に両手を乗せていますから。
つまり、あからさまに僕の空中領域を侵しているのです。

が、僕は思い込みました。

「気の大きそうな人だから、しょ、しょうがないかなぁ」

続いて、チョンチョンと足が触れました。

僕はゆっくりと右側に足を寄せました。

思い込みます。

「も、もしかして酔っ払っているのかなぁ、しょ、しょうがないなぁ」

少しの間。
ちょうどスクリーンでは最後の濡れ場というべきシーンで、
男2人がこれでもか、と頑張ってます。

そして…




手を触れてきました。


「ひっひぃーーーーー!」
高速反応、というか、もう反射で手を払いました。

スクリーンでは濡れ場最高潮!

今度は太ももを触ってきました。

スクリーンでは濡れ場最高潮!

触った手が撫でる動きに変わりました。

スクリーンでは濡れ場最高潮!

撫でる手が鞄の下の股間に移動してきました。
腰を動かして払いました。

まだ濡れ場は終らない!

もう少し。

あと少し。

何が?

終わりが?

貞操?

使命感?

貞操?





しばらくボーとしました。(1秒くらい

我に返りました。

逃げなきゃ。

でも、僕の居る席は中央なので、
逃げるには右のマックを広げているおじさんの席を横切るか、
左の張本人の方の前を横切るかしなければなりません。

少し考えました。

でも考えるまでも無く、
自分がここに滞在し続ける事のヤバさが空気で伝わってきます。
それを脳で捉えた瞬間、
僕は、張本人の前を通り過ぎて席を立ちました!
疾風のように逃げました。

上映時間残り5分を残して。




あとの事はよく覚えていません。
気付いたら、皆さんが待っているマックで、
事情を興奮しながら喋っていました。

一応この時点で、僕は、
「最後まで観る」という目標は達せられなかったものの、
「触られた」という経験を出来たのだから、
ここに来た意味があったと思ったのです。
良くやった自分。
僕でしか出来ないよ!
そう思ったのです。

そして愕然としました。
皆が席をたったのは、チキンとかではなく、
「触られた」のが起因だという事。
「触られた」のは僕だけじゃなかったのです。

もちろん僕はこの時まで、その事実を知りませんでした。
アレをやられたら、逃げますよね…そうですよね。

なんだか敗北感で一杯になりました。


【まとめ】
long君、

皇子さん、

めむさん、

なんだか見下してゴメン。
結局、僕が一番小物っぽかったです。

凄い惨めな気持ちで一杯です。

でも、よくよく考えたら、皇子さんはあんだけ1人でビビっていて、
1人で被害ゼロというのが、少しやるせません。

外に出ると、少し肌寒さを感じました。

おかあさん、東京はもうすぐ冬です。

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